ピアノ愛好家にとって、ショパンの手がどんな形、大きさだったのか、とても気になるところですが、ショパンの左手の実寸大の模型が残されていて、詳細に知ることができるんです。
ショパンの死後、彫刻家クレサンジュが顔と左手の型を取り、デスマスクとデスハンドを制作しました。
ちなみに、このクレサンジュという人はショパンの恋人ジョルジュ・サンドの娘婿にあたる人です。
このデスハンドのオリジナルはワルシャワのショパン記念館に保管されていますが、その複製品の石膏模型はポーランドの土産物屋で買うことができます。
それを見ると、女性のように、細く華奢な手だったことがわかります。
結核を長く患っていたせいで、臨終のときは相当痩せ細っていたと思いますし、ショパンの身長は約170㎝、体重は45㎏くらいだったそうですから、この体格から想像しても、やはりこのような手が相応しいようですね。
ちなみに、はずかしながら、私の手と比べてみると、こんな感じです。
ピアニストは何時間もガンガン鍵盤を叩く重労働なので、一般的に指が太く、丸く、関節がコブのように節くれだち、手のひらの筋肉も肉厚になって、まるで野球のグローブのような手になるものです。
よく文学作品に出てくる「白魚のような繊細な指のピアニスト」などはありえないのです。
そんな指でリストやラフマニノフなどは弾けません。
ショパン自身の演奏について「音量は決して大きくないが、気品に満ち、さり気なく優雅で、音が澄んでいてかつ華やかだった」という当時の記述が残っていますが、このショパンの手型からもその演奏ぶりが容易に想像できます。
手のひらのサイズと比べ、指の長さが長く、特に小指が長いのが特徴です。
ショパンの手は10度(下のドから上のミまで)まで届いたそうですが、当時のピアノは今のピアノより鍵盤の幅が若干狭かったので、おそらく現代のピアノでは9度までしか届かないのではないかと思います。
でも、ショパンの指はとても柔軟性があって、各指の間をよく伸展できたそうなので、あるいは11度くらいまで届いたのかもしれませんね。
この左手で、あの「革命のエチュード」を弾いたんだと、想像するだけで、なんだかワクワクしますよね。